宇宙をテーマに花巻を盛り上げる民間プロジェクト「花巻スペースプロジェクトUP花巻」
参加している岩手県立花巻北高等学校(花巻北高)生徒が国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟を活用した宇宙実験に挑戦しました。
2022年11月27日(日)日本時間午前4時20分、高校生が調製したタンパク質サンプルはNASA 26th Commercial Resupply Service mission (CRS-26)の一部としてSpaceX社クルードラゴン補給船に搭載され、米国フロリダ州のケネディスペースセンターから打上げられました。
花巻北高の科学部および有志の生徒約20名がこの宇宙実験に参加し、2022年夏から全6回にわたり授業をします。
2022年6月 岩手医科大学阪本教授による講義・タンパク質結晶化実験
2022年7月 結晶化条件探索
2022年9月 結晶評価・タンパク質結晶化条件の追加検討2022年10月 宇宙実験用タンパク質溶液充填作業
2022年11月 ISSに向けて打上げ
―宇宙での結晶化―
2023年1月 結晶サンプルが地球に帰還
2023年2月(予定) 結晶サンプルを観察・考察
2023年3月 (予定) 活動結果報告会
既に4回の授業が実施され、岩手医科大学薬学部で教鞭をとる阪本泰光教授の特別講義や実際に自分たちで手を動かして結晶化溶液を調製する実験を通じて、宇宙実験やライフサイエンスについて学びを深めてきました。
今後、生徒たちは地球に帰還したサンプルの観察・考察をしていき、自らが設定した仮説を検証していきます。
UP花巻ではこれらの宇宙実験の機会を通じて、生徒に自ら問いを立て検証していく力や、地球での暮らしを豊かにする宇宙利活用への興味関心の醸成を目指しています。
ISS「きぼう」船内では、これまでJAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)により約20年にわたり宇宙空間でのタンパク質結晶生成実験が実施されてきました。
タンパク質は、生命活動を支える重要な分子であり、タンパク質の構造を解明していく事は生命現象の解明や医薬品の開発に役立ちます。地上でもタンパク質の結晶を生成することは可能ですが、密度差などによる流れ(対流)の影響を受け分子が乱れてしまう一方で、ISSの微小重力空間では、この対流が発生しないため分子が規則正しく並んだ高品質な結晶を作ることができます。
こうして宇宙で作られた高品質なタンパク質の結晶から構造情報を得ることで、新薬開発プロセスを加速することが期待されています。
この宇宙実験を通じて過去には、インフルエンザウイルスの創薬等に活用されています。
岩手医科大学 薬学部 阪本泰光教授
2002年 長岡技術科学大学工学研究科博士後期課程 単位取得退学
2005年 昭和大学大学院薬学研究科 博士(薬学)
2011年 JAXAとの共同研究開始
2014年 世界で初めてタンパク質やペプチドを栄養源とする細菌の生育に重要な酵素の立体構造を決定
2016年 ISS Research Award受賞(NASA, AAS, CASIS)
2017年 ペプチド型細菌ジペプチジルペプチダーゼ7阻害剤 特許出願
2019年 歯周病菌に対する抗菌薬候補化合物の発見
2021年 世界で初めて多剤耐性菌由来DPP7の立体構造を決定
大阪大学蛋白質研究所 共同研究員
「百年生きる君たちが花高百年の学びを創る」のキャッチフレーズのもと、「学ぶ力の育成」に力を入れる岩手県立の高等学校。2022年度から2年間の「スペース・プロジェクト」を掲げ、全校生徒で宇宙をテーマに学びを深め、「宇宙に一番近い高校生」として、横断的な学びを経験し、非認知能力や起業家精神の育成を目指し、挑戦と失敗を繰り返しながら実践的な課題設定力や意思決定力を育んでいる。2022年に創立90周年を迎えた。
学校名:岩手県立花巻北高等学校
設立:昭和6年3月5日
所在地:〒025-0061 岩手県花巻市本館54番地
学校長:須川和紀
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