花巻に生まれ育った宮沢賢治は、宇宙を題材として童話「銀河鉄道の夜」「よだかの星」「双子の星」「シグナルとシグナレス」や「星めぐりの歌」などを残しました。その他にもいくつかの詩作品や、例えば「かしはばやしの夜」では、満天の星を「銀のきな粉」と表現するなど、月や星、宇宙をよく語り、農業、科学、信仰、文芸という分野の他に、天文、宇宙への関心も持っていたようです。水沢の緯度観測所(現国立天文台水沢VLBI観測所)をたびたび訪れた記録も残っていて、この観測所事業を行っていた木村栄博士がテニスに興じる描写が「風野又三郎」に描かれたりしています。
地元花巻企業SPACE VALUEと宇宙ベンチャーSpace BDがいまこの地で「花巻スペースプロジェクト『UP花巻』」をスタートさせました。無限の可能性をもっている「宇宙」の力で花巻を盛り上げたい、そんな想いから発足した民間プロジェクト。花巻には今、宇宙に関わる企業はほとんどありませんが、賢治のふるさとだからこそ、宇宙は身近なものとして市民の中にも根付いていると感じます。このプロジェクトは、SPACE VALUEの安藤修一が生まれ育った花巻を「宇宙」で盛り上げ、将来の花巻そして日本を担う人材を育てたいという想いから立ち上げられました。そこに衛星打上げサービス、ISS軌道上の運用サービス、さらには宇宙をテーマとした地域産業振興・教育事業など宇宙の新たな利活用を創出する事業を展開しているSpace BD株式会社が加わり、より「宇宙」の力を活用できる体制で取り組むことになりました。
花巻スペースプロジェクト「UP花巻」は「衛星開発プロジェクト」、「地場産業プロジェクト」の2つからなり、宇宙を利用して地域を盛り上げるプロジェクトです。プロジェクト全体の最終ゴールはこのプロジェクト通じてイノベーティブな人材育成することや、これからチャレンジして花巻を盛り上げようという想いを持ってくれる人を輩出することです。プロジェクトそのものは2020年ごろから始まりましたが、公に実施を発表したのは2022年3月に行った記者発表会。岩手県立花巻北高等学校生徒会長や当時の川村俊彦校長、SPACE VALUE代表社員安藤修一、Space BD社長永崎将利、オンラインで東京大学大学院工学系研究科中須賀真一教授、岩手医科大学薬学部阪本泰光教授が参加し、元宇宙飛行士の山崎直子氏からもビデオメッセージをいただいたその会見をもって、花巻を宇宙で盛り上げるこのプロジェクトが正式にスタートしました。
これより「UP花巻」を構成する2つのプロジェクトの内容とこれまでの歩みを紹介します。すべては未来の花巻、日本を担う人材を、宇宙を使って育てるということが目的です。
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