「花巻スペースプロジェクトUP花巻」3年目突入
岩手県立花巻北高校において、1年生、2年生がそれぞれ2年生、3年生へと進級し、新入生を迎えた新年度。いよいよこれまで取り組んできたプロジェクトの集大成となる人工衛星「YODAKA」を宇宙に送り届ける年となります。これまでの取り組みを、数日前に入学したばかりの新入生に説明&2・3年生にはこれまでのおさらいとともに、今年度「YODAKA」を使って実施を計画しているミッションの説明会となる「ミッションキックオフ」が4月12日に開催されました。
新入生にこれまでの活動を説明したのは、ともに新3年生の石井初菜さんと水戸京香さん。2年前に全校生徒から募った案から、実際に人工衛星を使った花巻北高独自の「宇宙を介して短歌で繋がる」ミッションを決めた審査会、決定会の様子、東京大学大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻中須賀真一教授ご指導の元で、空き缶サイズの模擬人工衛星を使った「CanSat」開発・落下実験による衛星開発プロセスの追体験、岩手医科大学薬学部構造生物薬学分野 阪本泰光教授のご指導で、国際宇宙ステーション(ISS)でのタンパク質結晶生成実験、実際にISSの乗っていた宇宙飛行士などからの講演、実施してきた各種ワークショップなどについて、新入生たちに伝えました。
今回のミッションキックオフの目玉は完成した人工衛星「YODAKA」の模型です。2020年に「花巻の人工衛星を」というプロジェクトがスタートして以来、模型とはいえ生徒たちは初めて衛星の形を目にすることができました。ひとつひとつの部品説明を受けることで、より具体的に衛星を知ることができたと共に、より具体的に宇宙空間での「YODAKA」を想像することができました。
先輩から引き継がれたミッション
“「×宇宙」で花巻をUPする”という「UP花巻」プロジェクトの発案者である、合同会社SPACE VALUE代表社員で花巻北高OBの安藤修一からも、現役生たちへのメッセージをおくりました。花巻のこれからを担う若者たちへの大きな期待を込めたものでした。花巻の人工衛星「YODAKA」の打ち上げは今秋予定されています。ロケットで打ち上げられた「YODAKA」は一旦ISSに持ち込まれ、そこから宇宙空間に放出されます。それを花巻市民全員で見守ってもらえたらと思います。
【講師プロフィール】
講師:東京大学大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 中須賀真一教授
(中須賀教授プロフィール)
1983年東京大学工学部卒、1988年東京大学博士課程修了、工学博士。同年、日本アイ・ビー・エム東京基礎研究所入社。1990年より東京大学講師、助教授、2004年より航空宇宙工学専攻教授。日本航空宇宙学会、SICE、IAA等会員, IFAC元航空宇宙部会部門長、UNISEC元理事長、およびUNISEC-GLOBALは設立時より委員長。
超小型人工衛星、宇宙システムの知能化・自律化、革新的宇宙システム、宇宙機の航法誘導制御等に関する研究・教育に従事。世界初のCubeSatを含む超小型衛星13機の開発・打ち上げに成功しこの分野で世界をリード。政府の宇宙政策委員会委員。内閣府のFirstによる「(通称)ほどよしプロジェクト」の成果で2017年度宇宙開発利用大賞・内閣総理大臣賞受賞。2019年総務省電波の日総務大臣表彰など多数受賞。
講師:岩手医科大学薬学部構造生物薬学分野 阪本泰光教授
(阪本泰光教授プロフィール)
博士(薬学)昭和大学。2002年 長岡技術科学大学工学研究科博士後期課程 単位取得退学、2002年より昭和大学保健医療学部助手、講師、2008年より岩手医科大学薬学部助手、准教授を経て2022年より教授。大阪大学タンパク質研究所共同研究員、さいたま市立大宮北高校SSH運営指導委員、岩手県立花巻北高校学校運営協議会会長
様々な生命現象を担うタンパク質の立体構造から、生命の仕組みの解明や医薬品の開発を目指す構造生物学に関する研究・教育に従事。2005年に世界で初めてヒト脳由来CNPaseの構造解析に成功し、2011年にJAXAとISS「きぼう」日本実験棟の微小重力環境を利用した高品質タンパク質結晶生成に関する共同研究を開始、2014年には、世界で初めてタンパク質やペプチドを栄養とする病原菌の生育に重要な酵素の立体構造を決定。2016年に、その生育・増殖機構を利用する抗菌薬開発の成果でNASA, AAS, CASISより国際宇宙ステーション研究賞 (ISS Research Award)を受賞、2021年には世界で初めて多剤耐性菌由来DPP7(ジペプチジルペプチダーゼ7)の立体構造を決定し、2023年にそれらの研究成果に基づいて抗菌化合物の特許を取得し、国内外の多くの研究機関、企業と共同研究を進めている。
【岩手県立花巻北高等学校 プロフィール】
「百年生きる君たちが花高百年の学びを創る」のキャッチフレーズのもと、「学ぶ力の育成」に力を入れる岩手県立の高等学校。2022年度から2年間の「スペース・プロジェクト」を掲げ、全校生徒で宇宙をテーマに学びを深め、「宇宙に一番近い高校生」として、横断的な学びを経験し、非認知能力や起業家精神の育成を目指し、挑戦と失敗を繰り返しながら実践的な課題設定力や意思決定力を育んでいる。2022年に創立90周年を迎えた。
学校名:岩手県立花巻北高等学校
設立:昭和6年3月5日
所在地:〒025-0061 岩手県花巻市本館54番地
学校長:佐々木信明
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